お客さまの日常に溶け込むパン 鈴木麻希 高普50 2000年(平成12年)卒業
故郷である菊川市嶺田にパン工房ふくふく堂を開店して2年になります。
池新田高校に在籍していた3年間は、高校から始めた吹奏楽に費やした時間が、記憶のほとんどを占めています。
当時一緒に音楽に向き合った仲間たちは、それぞれの道に進んだ今も、大切な私の友人です。
卒業後は浜松にある製菓製パンの専門学校に進学し、同じ浜松に拠点を置く製パンの会社に就職しました。
結婚、出産を機に10年以上製パンの仕事からは離れておりましたが、子どもたちの成長もあって再び製パン業界に復帰。良い職場や仕事仲間にも恵まれ、このまま会社組織の一員として頑張っていく未来も見えてきたころ、実家近くに空き店舗が出たことを知りました。
私はまだ独立できるような実力ではないと思いましたが、「これが最後のチャンスかもしれない」とも思いました。
いつか自分の人生の終幕のときに、「夢を叶えてみたかった」と言って終わるのだろうか。叶えられなかった理由はなんだろうか。ただ自分に踏み出す勇気がなかったことを、実力、お金、家族、健康、年齢、もっともらしい理由をつけて目をつぶる、そんな終わり方を自ら選ぼうとしている私は、子どもたちの目にどんな風に映るのだろうか。
そこまで考えたところで、独立を決めました。
今振り返ると無謀な挑戦ではありましたが、力になってくれたのは、高校時代の友人たちでした。2時間もかかる距離をわざわざ出向いてくれたり、何度も相談を聞いてくれたり、四半世紀も前に数年学び舎を共にしただけの私のために、入れ替わり立ち代わり。
なんとか軌道にのせられたときには、一緒に飛び上がるほど喜んでくれました。
今たくさんのお客さまに出会い、日々パンを焼いて暮らすことができるのは、数え切れないほどの応援や協力があってのことです。
その感謝と喜びを忘れず、この町でこれからもお客さまの日常に溶け込むパンをお届けしていきたいです。
鈴木麻希(旧姓・山内)
2000年(平成12年)卒業
パン工房ふくふく堂 店主
菊川市嶺田286-1